生唾を飲み込むとは、口の中に大量に涌いてきた唾を飲み込むという意味で、食べたい物や欲しい物を目の前にしながらそれに飛びつくことができず自制している心境を物語っている。
似たような言葉に、よだれを垂らすという意味の「垂涎(すいぜん)」があるが、欲望のままによだれを流しっぱなしにしている「垂涎」は、いずれその欲望の対象にありつけるか、すきがあったら飛びつこうとしている状況であるのに対して、「生唾を飲み込む」は、垂れそうになるよだれを飲み込んでいるところから、欲望の対象にありつく見込が薄いので我慢していたり、自分の欲望を人に見せないように隠しているという人間臭い姿を言い表している。「お座り」をさせられている犬は、食欲を少しのあいだ我慢しているだけなのでよだれを流しっぱなしにしている。これはまさに「垂涎」であり、「生唾を飲み込ん」でいる犬なんていない(ときとして、そのようなけなげな仕草をみせることもあるが)。(CAS)