味のある(味がある)とは、飲食物に味がついているということだが、味のない飲食物というのはほとんどないので、「いい味がする」「うまい味がついている」という意味であろう。だとしてもこの言葉は食べ物については用いられず、ものごとを見たり聞いたりして感じられるいわくいいがたい魅力をいい、「あの役者は味のある演技をするね」「あなたの文章には味がある」などと用いられる。要するに、どこがどう優れているのか、おもしろいのかをはっきり指摘することができない、もしかしたらほんとうに優れているのか、おもしろいのかどうかわからない、またはどんなにすぐれていたりおもしろかったりしても受け手がそれを感受する能力がない等々、このようなケースで相手や作品などをむりむりほめるのに繰り出す必殺用語である。誰でもすぐわかる見た目の美しさや聞き心地のよい声、泣かせる文章力などがないから、「味」という批評のしようがない領域に逃げているというわけである。(CAS)