霊安室とは、病院の中にある死体安置所、あるいは死体一時預かり所である。まだ生きている人を取り扱っている病院としては、「死体」という言葉は避けたいとの考えからこういう名称を使っているのかと思われるが、厳密に言えば、死体は「霊魂」が抜け去ってしまった肉体であるから、「霊を安置する部屋」は少しおかしい。好意的に受け取って「霊魂が死体の側を離れかね、まだその部屋に残っている」と解釈したとしても、肉体は「安置」されているかもしれないが、霊魂の方は肉体に戻りたくても戻れないとそわそわしていて「安らか」どころではないだろうから、やはり言い方をもう少し工夫した方がよい。さらに大甘に解釈して、「死んでしまったことを霊にあきらめてもらい、安らかに旅立っていただきたい場所」とでもしておけば納得できるが、そもそも、科学的な医術を旨とする病院が「霊」がどうのこうの言っていること自体がおかしいといえばおかしい。
結論をいえば、病院側としては病人が死んでしまってもう管轄を離れてしまったので、その事実を明確に表現するために、こういう非科学的でおおざっぱな言葉づかいをしているということなのであろう。(CAS)