カテゴリー:音楽、演劇、芸能、映画
落語とは、日本の伝統芸能のひとつで、フリーマーケット(ぼろ市)のような貧乏人のための演劇。芝居小屋(寄席)に、演者(落語家)たちが使い古された話(古典作品)や手作りの作品(新作)を持ち寄り、退屈しのぎにやってきた観客の前でそれらを披露する。庶民的な「笑い」を旨とする演目が多いため、怪しげな香具師によるがらくた商いのようにみなされてきたが、二〇〇年も前の作品が現代人を普通に笑わせる力があることから、古典芸能としての価値も見直されようとしている。しかし、当の本人(落語家)たちにはその自覚はあまりなさそう。
落語は、ひとつの演目について演者一人。ただし「一人芝居」とは異なり、一人の演者が登場人物の全てを演じる。衣装は自前の着物で、舞台装置は一部の演目を除いて原則的にはなし、小道具も扇子と手拭いくらいであり、究極のローコスト演劇といえる。この演劇において、最も豪華なのはオーケストラで、多いときは三味線、笛、太鼓の3人編成からなり、出演者が登場するとき、序曲(出演者のテーマミュージック)を演奏する。大阪地方では上演中にバックグラウンドミュージックとして演奏されることもあるが、江戸落語ではそれもなく序曲のみに専念するという贅沢さである。(CAS)