邪(横しま)とは、正しくないこと、道理に外れたこと、邪悪であることという意味。「横の状態」という意味の「よこさま(横様)」が転じた言葉だといわれる。
「横(よこ)」は、前からやってくるものとぶつからないように左右に逃げるという意味の「避(よ)ける」と同根で、中心に対して左右に外れた位置、あるいは、垂直方向を表す「縦(たて)」に対して水平方向を表し、そこから、中心をはずれる、真実や正義をはずれる、つまりアウトサイダーを意味する言葉でもある。したがって、例えば「よこしまな心(横の状態の心)」といえば、家出少女の悩みを聞き保護してあげるようなふりをしつつ、実は裏社会に売り飛ばすことを考えているような邪悪な心をいうのである。
「横しま」は字面から見れば、水平方向のストライプつまりボーダー柄であるから、西洋の囚人服の柄が連想され、「正しくないこと」という意味と合致しそうである。しかし囚人服のボーダー柄は『旧約聖書/レビ記』の「二種の糸で織った衣服を身につけてはならない」という記述に由来し、「二種の糸で織った柄」つまり「しま(ストライプ)」であることが問題なのであって、もとは「様(さま)」であった日本の「よこしま」とはまったく無関係。西洋と日本の悪魔の国際会議によって、「よこしま」という議題について共通認識が持たれたというわけではなさそうである。(CAS)