無知の知とは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの思想の根幹をなすキーワードで、「おのれの無知を自覚しているものこそ本当の知者である」という意味。まるでわれわれおバカをはげます言葉のように聞こえるが、おバカは自分の無知を自覚してはいるものの、それっきりでそこからなにも新しいことを生み出さないので「無知の知の無知」といわれるべきものである。
プラトンの著作によると、神のお告げで「きみがいちばんの知者である」とご指名を受けたソクラテスは、私みたいな無知な者にそんな名誉はふさわしくないと考え、当時のアテナイで知者や賢者と自他共に認めていた人々に片っ端から議論をふっかけてみた。そのディベートでソクラテスは連戦連勝し、「結局、自分の無知を知っているオレこそがいちばん賢いのだ」と、遠慮しているんだか傲慢なんだかよくわからない結論にたっしたという。
つまりプラトンは、ソクラテスの行状を通じて、真の知者は無知であると自覚しているからこそ知を愛し、真実を探し求めるのだといいたいのであり、「無知の知」は、「知を愛する人」という意味のフィロソファー(哲学者)の理想として、その後幾多の優秀な人材をおだてて、はてしなくムダな知の探究の旅に誘うスローガンとなったのである。(CAS)
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