マイペースとは、自分の歩調、速度という意味だが、こちらは急いでいるのに相手の進み方が遅いときに「あいつはマイペースだから」などと用いることが多く、いらつきながらも「あいつはのんきでうらやましいよ」という気持ちをこめている。この場合、英語ではmy paceではなく、his own paceとしなければならないところだが、日本語は自分であろうが他人であろうが「マイペース」で取り仕切っている(つまり、英語のルールにいちいち従うのが面倒なものだから、「マイペース」でやっているのである)。また、日本語化したマイペースは「歩調」「速度」に限らず、相手の態度や仕事のやり方が気にくわないときも「あいつはマイペースすぎる」などと用いる。これも英語ではhis attitudeとかhis own wayといった言い方になるだろうが、要するに日本語では、「あいつと組んで仕事をしたくない」「あいつと一緒にいるのはいやだ」けれども「自分もそんな調子で仕事したい」「そんな態度で生活したい」と考えるときに、なんでもかんでも「マイペース」を用いるのであり、そんな日本語のいい加減な用法こそマイペースだといえる。(CAS)