盆とは、7月あるいは8月に行われる、祖先の霊を招いて供養する行事だが、日本では2、3代前の祖先など、名前も知らないという人がほとんどなので、言い換えれば、身元のよくわからない死者を招いて饗応のまねごとをするという名目で夏期休暇を楽しむための行事。
お盆は、中国で成立した盂蘭盆経(うらぼんきょう)の説話に、日本の魂祭りの習俗が結びついた行事と考えられている。「盂蘭盆」とはサンスクリット語で「さかさ吊りになっている人を救う」という意味らしいが、死者があの世からやってくる(よみがえる)という恐怖のイメージをよく表している。実際、昔の人々にとってお盆の行事は、祖先の霊もそれ以外の悪霊も一緒になって襲来する恐怖の期間でもあったようで、悪霊の魂を鎮め、早くあの世に帰ってほしいというまじないのために踊られたのが盆踊りだという考え方もある。その意味で、この行事は欧米のハロウィーンに似ている。
お盆は旧暦7月15日を中心に行われるが、旧暦7月15日は、新暦では8月中〜下旬に当たるので、現在ではお盆の行事を8月15日を中心に行う地方が多い。この時期は子どもの夏期休暇にも当たるので、大人も便乗して休暇を取り、田舎の実家に帰ったり、家族旅行を楽しむのを習慣としている。しかし、ハードなスケジュールのために、骨休めをしたいはずの父親はほとんどゾンビのようになって休暇を終えるケースが多い。(CAS)