カテゴリー:食文化、料理、食品、食材
河豚とは、「死ぬほどその魚が食べたい」と熱望した多数の人々の命を奪いながら調理法が確立された魚。すなわち、最後の晩餐におすすめの一品。
日本人のこの魚に対する情熱は異常とも思えるほどで、もっとも毒素・テトロドトキシンを含む可能性が高い卵巣でさえ、日本のある地方ではピクルスにして毒抜きし食べている。ただしこの河豚の卵巣のピクルスは、なぜ毒が完全に抜けるのか原理が解明されておらず、理屈が通らなければ行動できないという方は箸をつけないほうがよい。
美食家の言によると、河豚は魚類の中で最も美味、特に毒を含む部位ほど美味であり、体が麻痺するくらいの危険を冒して食べるのがよいとされる。そうした死地からの生還者(あるいは死地からの生還者を装う人々)の無責任な発言が、なおいっそうこの魚の神秘性を深めている。(CAS)