馬鹿(バカ)とは、日本語で愚かなことや愚かなヤツを言い表すのに、最も簡潔で的確であり、言われている当の「バカ」にもよく理解でき、言い方によっては親しみをこめた愛情表現にもなるという、日本語初心者には最初に覚えていただきたい悪口である。
岩波書店の『広辞苑』を編集した新村出博士の説によると「馬鹿」は、サンスクリット語で根源的な無知を意味するモーハ(moha)の音写である「莫迦」「莫何」が、いつしか現在の「馬」と「鹿」という漢字に置き換えられたものだという。サンスクリット語にはそのまんまのバカ(baka)という言葉があり、それを語源とする説もあるが、こちらは悪漢、詐欺などの意味で、意味的には「馬鹿」からやや離れる。「莫迦」や「莫何」が「馬鹿」になったについては、中国・秦の始皇帝のブレーンであった宦官・趙高が、宮中に鹿をつれてきて「珍しい馬がいる」と言い、家来の従順さをためしたという逸話に由来するという、マユツバものの話が流布しており、ほんとうかどうかもたいして究明されていない。現代中国語では「馬鹿」は、「アカシカ」という鹿の一種をさすらしいから、趙高の「馬鹿」はこの「鹿」だったというなら、まだわからないでもない。(CAS)