花見とは、直訳すると「花を見ること」「花を観賞すること」という意味だが、日本では「花」は「桜の花」を指し、「観賞すること」は「観賞することを名目に飲食を楽しむこと」と言い換えられる。
「花より団子」という例えがあるように、「花見」は花を落ちついて観賞するものではなく、仲間で集まって宴会を開くことが重要なのである。このような飲食のありかたは、神様にいったん捧げた供え物を下げて、神前で皆で神の恵みに感謝しながら(しかし現実は、酔っぱらって神様への畏敬も感謝もなにも失って)飲食を楽しむという日本の伝統的な祭祀の開催方式に起因するとみられる。
花見の観賞姿勢は、日本人の観劇やスポーツ観戦にも共通したものがある。例えば、江戸時代の歌舞伎や寄席は飲食しながら観賞するのが普通であり、相撲や野球のようなスポーツ観戦にも同様の傾向が見られる。歌舞伎や相撲の興行が一日中たらたらと行われ、観客から「もっと短く集中してやれ」というような不満が起きないのも、観客は飲み食いして楽しみながら、大事なところでは観劇や観戦に集中するという鑑賞スタイルが定着しているからである。(CAS)