半狂乱とは、精神的に常軌を逸し、それが異常な行動となって現れている状態をいい、「彼の妻が浮気現場に半狂乱で乗り込んできた」などと用いるが、そのように聞けばわれわれは、「彼の妻」が目をつり上げて泣きわめき、ややもすれば包丁を手にしたりして、浮気している夫に襲いかかっている姿を容易に想像することができる。「半狂乱」の「半」は「半分」という意味だが、半狂乱状態のその人の様子は、「半分狂乱」というより「ほとんど狂乱」である。つまり、そのような常軌を逸したありさまは「狂乱」ですでに表されており、「半」を付ける必要はないのだが、おそらくこの「狂乱」は精神的に完全に破綻してしまっている人の行動様式を言っているのであって、一時的な精神破綻で夫に包丁をつきつけている妻のありさまは、このまま死ぬまで「狂乱」したまんまではなく、明日になれば冷静さをとりもどして離婚手続きに取りかかるから注意せよという、夫への警告をこめて「半」が付けられているのでないかと思われる。(CAS)