カテゴリー:宗教、民間信仰、俗信
念仏とは、浄土宗においては、仏を心に念じながら「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と口に出してとなえることで、「称名(しょうみょう)念仏」ともいい、極楽に入国するためのパスポートである。実際のパスポートのようにめんどうな申請手続きもなく、極楽への入国にあたって審査もなく(むしろ極悪人のほうが優遇されたりする)、熱心に念仏をとなえる人には気前よくビザが発行されたので、浄土宗グループは日本において人気ナンバーワンの宗派となった。
「念仏」という漢語訳でも知れるように、インドにおける原語は「仏を心に思うこと」。しかし中国語の「念」には本などを口に出して読むという意味もあり、浄土宗の開祖・法然はここに着目して「称名念仏」を自宗のコンセプトにすえ、「専修(せんじゅ)念仏」つまり「念仏オンリー!」のキャッチフレーズによって庶民に広めた。「南無阿弥陀仏」ととなえることはどんな教養のない庶民にもできるが、口に出すことにより浄土宗への帰依を表明するわけで、ある意味勇気を必要とする行為であり、それこそまさに身分証明書、パスポートの役割を果たすのである。法然のすぐれたマーケティング能力といえるであろう。(CAS)