この辞典の使い方>「ぬ」で始まる言葉>鵺、鵼、ヌエの意味、由来
カテゴリー:宗教、民間信仰、俗信
鵺(ヌエ)とは、トラツグミの一種の鳥の名前でもあるが、一般的には、平安時代末期の武将・源頼政によって退治された得体のしれない怪物として知られている。『平家物語』によると、近衛(このえ)天皇の病の元凶とされたその怪物は、頭はサル、胴体はタヌキ、尾はヘビ、手足はトラという、とてつもない姿をしていた(しかし、つくづく想像してみると、あまり怖そうではない。せめて、頭がトラだったらまだしも…)ようだが、そのいかにもとってつけたような混交ぶりは、よほどおびえて相手を見据えることもできずいい加減な申告をしたのではないかという疑いをかけたくもなる。しかし記事によると、このヌエなる怪物が空中を飛んでいるところを頼政が矢で射落として、配下の侍が刀で刺し殺した後に遺体検分をしたというから、正しい報告であったには違いない。とはいえ、やはり彼らは怪物退治でいっぱいっぱいだったに相違なく、この珍しい怪物を剥製にして保存しておこうというところまで気が回らなかったのは、かえすがえすも残念としかいいようがない。
このように現場担当者の不注意から、結局得体の知れない怪物としか伝わらないヌエは、現代でも、姿を現さず人々をあやつる黒幕的存在について「ヌエのようだ」と比喩する言葉として活用されている。(CAS)