殴る(なぐる)とは、人を(たいていは憎い相手を、あるいはそうしなければこちらが痛い目にあう相手を)強く打つ、たたく(たいていはグーで。パーだと「はたく」になり、チョキだと突き指をしてしまうので)という意味。鎌などで草の束を横に払うように切ることを「薙ぐ(なぐ)」といい、「殴る」や「投げる」はこれと同系の言葉らしい。つまり、水平方向に腕を強く振る行為がこれらの言葉に共通しているわけで、「殴る」も、厳密に言えば、横方向に腕を振って相手に打撃を加える行為であり、ボクシングでいえば「フック」がそれにあたる。この考えでいくと、「ストレート」や「ジャブ」など腕を押し出して打つパンチは「突く」と言い表されることになり、垂直方向に腕を振って相手を打つ「アッパーカット」は、やや正確さに欠けるが「突き上げる」とでも言うことになろう。しかし、けんかの際はそんな言葉にこだわっている余裕はないので、「ぶんなぐってやる」と言っておきながらフックを出さず、ストレートを突き出して相手をノックアウトしてしまうのも「アリ」である(もっとも、相手だって「なぐる」と言われてフックが来ると考えるヤツもいないだろうし)。(CAS)