月夜に釜を抜かれる

つきよにかまをぬかれる

 月夜に釜を抜かれるとは、泥棒が活動しにくい明るい月夜に炊飯の釜を盗まれるという意味で、油断していてひどい目に会う例えとして用いられる。その昔炊飯用の釜は、土・石・レンガなどで作った竈(かまど)の穴に落とし込まれて使用されていたので、「釜を抜かれる」という言い方が釜を盗まれる意味として実感があったのである。しかし「月夜が明るい」ということも、「闇夜に乗じて泥棒が活動する」ということも、「釜を抜かれる」ということも、さらには「泥棒が釜を盗む」ということも、現代ではなにひとつリアリティがなく、何を言いたいのかわけのわからない言葉となっている。「釜を抜かれる」は「釜を掘られる(男が男に性交される)」と似た響きがあるが、「油断していてひどい目に会う」と言いたいなら、そちらの意味で理解されていたとしてもさしつかえないように思われる。(CAS)

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