抽象画とは、壁紙と見間違われないように額に入れられたりしているため絵画であるとわかる絵画、つまり「主張する壁紙」。鑑賞者の側からすれば、何が描いてあるかわからない絵画、というより、それを見て何が描いてあるかわかったら、少し精神状態を疑ったほうがよい絵画。というのも抽象画は、絵画が現実の事物を写し取ったものでなくてもいいじゃないかという考えから生まれ、現実にしばられることなく絵画そのもの独立性を唱えるものであり、現実の事物の再現を画面上に求める鑑賞者には何が描いてあるのかわからなくて当然なのである。
抽象画は、カンディンスキーやモンドリアンによって創始されたといわれる。それ以前のピカソやブラックの初期のキュビズム絵画も、ほとんど何が描いてあるのかわからないが、現実の事物の彼らなりの再現には違いないので、抽象画とは呼ばれない。つまり、絵のドヘタな人が美女の顔をどんなに破壊的に描いても抽象画と呼ばれないのと同じ理屈である。(CAS)