卓袱台(ちゃぶ台)とは、折りたたみ式の脚の付いた和室用の低い食卓のこと。卓面が円形、方形のものがある。
日本人の食事は、長らく銘々膳(めいめいぜん)、すなわち家族個々に小さい食卓がしつらえられる形式が主流であり、食事中は家族の会話など交わさず黙って食うのが常識であったが、明治時代の後半から大正時代ころ、都市部におけるサラリーマン世帯の増加とともに、西洋から家族団らんというウソくさい風習が流れ込み、畳敷きのリビング(茶の間)においてそんなファミリーな風景を演出するために用いられるようになった装置が卓袱台だといわれている。卓袱台に円形のものが多いのは、下記で説明するように中国料理の円卓を模しているからとも思われるが、家族の平等感を演出する装置という役割を担っているからだと解釈することもできる。
「ちゃぶ台」の「ちゃぶ」という言葉は、中国料理の食卓を意味していた「卓袱(zhuo-fu)」の読みから来ているというのが有力な説である。中国語の「卓袱」はほんらいは、食卓にかける布、つまりテーブルクロスのことで、それがテーブルの意味にも用いられるようになったものらしいが、現代中国語ではなじみの薄い言葉である。中国料理の影響を受けた長崎発祥の会席料理である「卓袱(しっぽく)料理」も同じ語源であり、この料理の広まりとともに「卓袱」という言葉も世間に知られるようになった。江戸後期には蕎麦屋のメニューにも「しっぽく(「しっぽこ」ともいう)」が登場し、注文すると丼を円卓に見立てた五目蕎麦のようなものが出されたらしい。しかしそれなら「卓袱台」も「しっぽく台」と呼ばれてもよさそうなものだが、そうではないことから、「ちゃぶ」は中国語でお茶とご飯、飲食を意味する「茶飯(chafan)」が語源ではないかとする説もある。
日本の住宅から茶の間が消えようとしている現在、ちゃぶ台もレトロな家具となり、食事をめぐる家族団らんの演出は、ダイニングルームにキッチン、リビングルームを巻き込んで第二章が展開されているのである。(CAS)