立て板に水とは、立てた板に水をかけるという意味だが、よどみなく早口にしゃべる様子を例えた慣用句である。それも、どこぞのおばさんのようにただムダに早口にしゃべるのではなく、なにがしかの有益な情報(聞き手にとって有益な場合も、話し手にとってだけ有益な場合もある)を相手に伝えて説得するさいの言葉巧みな話術についていう場合が多い。さらに言うなら、聞いている方が相手のトークについていけず、感心してその話術に聞き入っているうちに、いつのまにかバナナをひとふさ買わされてしまったというような状況で用いるのにぴったりの言葉である。
「立て板に水」ならしみこむ間があるので、もっとすさまじい語り口を「立て板に玉(あるいは豆)」、逆にたどたどしい語り口を「横板に雨垂れ」「横板に餅」など、公認未公認含めて派生句の多い言葉でもある。(CAS)