カテゴリー:住文化、住環境、建築、インテリア、調度品
畳とは、日本間のアイデンティティを決定づける床材。海外の人々に紹介するには「タタミマット」と言うが、マットとして直接寝ころぶには硬く、逆に通常の床材のように家具を常時設置するには軟らかすぎる中途半端な敷物である。その中途半端さが利点でもあって、畳を敷いた部屋は食事室にも寝室にも利用でき、狭い住宅の有効利用には適していた。今ではそのユーティリティプレーヤーぶりがあだとなり、部屋の機能をはっきりさせ、家具も増えた日本の住宅から姿を消しかけている。
とはいえ畳は、昔からサイズがほぼ規格化されていたので、「4畳半(畳4枚と半分の広さ)」というだけで、日本人なら部屋の広さを想像でき、畳の敷いていない部屋でもそうした表現を用いて空間の感覚を共有している。さらに例えば、4畳半といえば「むさい男のひとり暮らしの部屋」、6畳なら「4人家族のつましいダイニング、またはリッチな子ども部屋」、8畳なら「少しは余裕のある主寝室」、14畳なら「住宅会社やマンション業者が偉そうに掲げるリビングの広さ」などと、そのライフスタイルまでイメージできるという優れた特徴がある。つまり畳は、「床材」としてより「物差し(スケール)」として今後も残る可能性のある素材である。(CAS)