スリッパとは、日本人が家の中ではいたりはかなかったりしている簡易な履物。英語のスリッパ(slipper)は、床を滑らせる(slip)ようにして履く室内用の靴という意味で、現代では小学校などで使う「上履き(バレーシューズ型の室内履き)」のようなものをさしているようだが、日本のスリッパは、平たい靴底に足先を納める覆いをつけただけの、裸足の感触を残した簡単な履物をさし、英語の語源により近い形であるように感じられる。
明治維新以降、建物は洋風化したにもかかわらず、家の中で靴を脱ぐ伝統的な生活を意固地に続けている日本人であるが、木製やタイルの床などでは足もとがさみしく感じるため、スリッパを愛用している。つまりスリッパは、洋風化した建物と和式の生活のぎりぎり妥協の産物であるといえる。
しかし、日本の家庭におけるスリッパのルールは難しく、その家の住人であればはいていてもはかなくてもよいが、客として訪れた場合は常にはいていなければならず、とはいっても、畳の敷いてある和室においてはぬぐ必要があり、さらに、トイレには別のスリッパが用意してあるのでそれにはきかえねばならず、決してそのスリッパのまま家の中をうろついてはいけない。(CAS)