カテゴリー:宗教、民間信仰、俗信
死神とは、「死んでいる神様」という意味ではなく、人間の死を管轄する神様である。人間の死期が近づくとその人の側にやってきて付き添い、死後は魂をあの世に導き、コレクションルームで死者の魂を管理する……といったような仕事に従事しているらしい。つまり、手回しのよい葬儀社のような存在だが、日本におけるそのような死神像は、西洋の「Death」の受け売りである。ただし、死神を「神」といいきっているのは、多神教の日本ならでは。一神教の国では死を担当する「神」などありうべくもなく、「Death」も、「死の使い」という属性をあたえられている(所属先ははっきりしないが)。
なお、日本において「死を管轄する神様」というと、日本神話のイザナミノミコト(伊弉冉尊)である。彼女は、神様なのに死んで黄泉の国(地下の冥府)に行き、そこで王様として君臨している。つまり、死と生産を繰りかえす大地を神格化した地母神(じぼしん、ちぼしん)的な存在であり、われわれにおなじみの魂を刈る鎌を持った黒づくめの死神のイメージとはほど遠い。ただし、夫のイザナギノミコト(伊弉諾尊)が地獄に会いにきたとき、恐ろしい姿になって追いかけてきたところは、少し死神らしさが垣間見える。(CAS)