カテゴリー:食文化、料理、食品、食材
旬とは、野菜や魚介類などの食べごろの季節のことで、温室栽培や養殖がなかった時代に特に尊ばれた価値観。いまでも、わずかに残った季節物の食材の「旬」への期待感は強く、輸入物や冷凍物が豊富にあったとしてもサンマは秋に食べるのが習いとなっている。とはいえ、本来冬に旬をむかえるウナギが、暑い時期の栄養源として夏場に大量に消費されるなど、その「旬」感覚は怪しいものがある。
食物において「旬」を尊ぶ日本では、タレントなどの人気が絶頂にあるときを指して「いまが旬」だと例える。つまりその時期を過ぎてしまえば、味が落ちて人々の支持を得られなくなると言っているに等しい。旬の時期を過ぎてもしぶとく生き残っている人に対しては、「熟練の芸」「枯れた味わい」「渋い魅力」などとなぐさめる言葉が用意されているが、要するに「高齢化して記憶力も衰えたが、小手先の技でミスをごまかすのがうまくなった」と言っているのである。(CAS)