カテゴリー:感情、感覚、精神状態、能力
幸い(さいわい)とは、その人にとって望ましく、喜ばしい状態、つまり幸せ、幸福のこと。古語では「さきはひ」。「さき」は、花が咲くの「咲き」であり、「はひ」は地を這うことの「這い」で、ものごとが地を這うように広がっていく様子を表している。したがって「さいわい(さきはひ)」とは、あたり一面植物が花を開き実を結んで、人間に心地よさや収穫の喜びをもたらしてくれる状態をいったものである。
類似の言葉に「幸せ(しあわせ)」があるが、これはものごとが自分の思い通りになること、つまり「ラッキー!」な状況を言ったもので、個人的な幸福感のニュアンスが強い。それに比べて「幸い」のほうは自然や田畑の恵みが地に満ちるといった、みんなで幸福をわけあって喜んでいる感じである。
また「幸(さち)」という言葉も「幸い」と似ているが、こちらの語源は武器の「矢」を意味する「サツ」で、狩りや漁の道具のこと、転じて狩りや漁の獲物をさすようになった言葉であり、「海の幸、山の幸」といった用いられ方をする。そのため、「幸(さち)」は狩猟、攻撃により積極的に勝ち取った幸せ、「幸い(さいわい)」は田畑や山野を守り育て、その恵みとして与えられた農耕型、採集型の幸せというイメージである。
日本人はやはり「幸(さち)」より、「幸い(さいわい)」の方が性に合っているが、最近はみんなで喜ぶ「幸い(さいわい)」より、個人や小集団でひとりじめする「幸せ(しあわせ)」のほうが優位に立っているようである。(CAS)