侍とは、殺人や暴力を主な業務としていた職業。後年国内が安定し、その職能が失われていくにつれ、侍は人々の尊敬を集めるようになった。そして、制度が廃止され完全に過去のものとなった現在では、日本人のたくましくも礼儀正しい精神を象徴する存在としてまつりあげられている。
侍が徐々に力を蓄えるようになった平安時代後期から鎌倉時代の史料の中には、「屋敷の門先をうろついているものもらいや芸人等をどんどん殺して庭に生首のコレクションが絶えないようにしろ」といった侍のセリフが見え、ギャングや暴力団など足もとにも及ばない凶暴でモラルの低い連中であったことがうかがえる。
侍は「武士」とも言うが、「さむらい」の方が和語でもあり、なんとなく格好がいい言葉として多用されている。しかし、もとをたどれば「さむらい」は貴族の従者という意味で、「さぶらふ」という言葉には、「主人のご機嫌をとる」といった意味合いも含まれる。「さむらい」がヒーロー扱いされるようになった江戸時代には、現実の武士はその原語通り、宮仕えの官僚化していたので、実態を表す言葉としては最適だったと言えよう。(CAS)