苔とは、長い間湿っぽいところに放って置かれた地面や石、樹木などに、カーペット状に生える蘚苔類、地衣類などの植物の総称。要するに、掃除もせず見放された場所に生じるカビとどっこいどっこいの植物で、ほとんどの国の人々はそんなものが繁殖するまで自分の周辺の環境を放ったらかしにしないが、変態的な趣味を持つ日本人だけは「さびた趣きがある」などとうそぶきつつ、地面や石に米のとぎ汁などをかけてわざわざ苔の発育を促したりしている。日本人のヘンな趣味の代表である盆栽ではもちろん苔は重要なモチーフであり、苔専門のショップがあるほど。
また京都には、寺の庭中苔だらけの通称「苔寺」と呼ばれる西芳寺という有名な寺があり、世界遺産にも指定されている。確かに、庭一面を覆う苔は芝生のような鮮やかさと緑に覆われた清涼感がないでもないが、とにかくじめじめしているので、芝生のように寝転んで気持ちのよいものではない点は留意しておかなければならない。(CAS)