甲乙付けがたいとは、どちらが優れているか判断するのが難しいという意味。「甲乙(こうおつ)」は、中国古代思想の十干(じっかん)の第一「甲(きのえ)」と第二「乙(きのと)」のことで、その昔は学校の成績表など、評価やランキングの数字がわりに用いられた文字である。「甲乙付けがたい」は、第一位と第二位を付けるのが難しいということなので、どちらも優れているが、どちらのほうが優れているかは評価しがたいという意味である。優れていない者同士の比較にはこの言葉は使わず、「どんぐりの背比べ」などというかわいらしい比喩が用いられる。
甲も乙も優れているなら、どちらが優れているか決める必要もないと思うのだが、甲乙付け難いところに甲乙を付けようとする人間の習性が、人々のインセンティブにつながっているのだと言えなくもない。(CAS)