心ばかりとは、「ほんの気持ちだけ」という意味だが、人に物を贈るときに「心ばかりの品ですがお納めください」などと謙譲の気持ちを込めて用いる。つまり、相手が喜びそうもない安っぽい品物をプレゼントするとき、「これはあなたに何かさしあげたいという私の気持ちを象徴したものにすぎないので、品物についてああだこうだと文句を付けず、気持ちだけ受け取って満足してください」と、クレーム対策のために事前にはりめぐらせておく予防線である。
贈り物を渡すときの謙遜表現には、他に「つまらないものですが」がある。「つまらない」は「おもしろみがない」という意味。品物は確かに相手が喜びそうもない安っぽいものかもしれないが、「こんなものをあげても、あなたは喜ばないよ」と言わんばかりに渡すのは、謙遜にもほどがあると思える。英語にも、small present for you(ちょっとしたものだけど)という言い方があり、贈答の際の謙遜表現は世界共通のマナーなのだろうが、「つまらない」なんて言わず、「心ばかり」と、せめて「心」くらいはおまけに付けたいものである。(KAGAMI & Co.)
カテゴリー:図解付き解説