後塵を拝するの「後塵(こうじん)」とは、馬車などが通った後に舞い上がる土ぼこりのこと。「拝する」は「受ける」の謙譲語で、「ありがたく頂戴する」というような意味。「後塵」は「ありがたく頂戴する」というようなものではもちろんないが、そこがこの言葉のポイントなのである。「後塵を拝する」は、もとは中国『晋書』で権力者にへつらう取り巻き連中を例えた表現であった。この場合、権力者の馬車が巻き上げた土ぼこりのようなものでさえこびへつらってありがたく頂戴する……と、字義通りすなおに解釈できる。しかし、いまこの言葉は「他人に先んじられる、後から来たものに追い抜かれる」といった意味で用いられることが多く、この場合、先に行く者は決して尊敬や畏怖の対象ではなく、むしろ羨望や嫉妬の対象であり、そうなると「後塵を拝する(砂埃をありがたく頂戴する)」は、ライバルにやすやすと先行を許した間抜けなあなたを言い表すのにぴったりハマる自虐的で嘲笑的な言葉となる。(CAS)