お通し

おとおし

　お通しとは、料理屋や居酒屋などで、注文してもいないのに酒のさかなとして最初に出てくる小料理のことをいう。「突き出し」ともいう。通常は無料で料理もそれなりのものだが、中には料理はたいしたことないのにたいそうな値段をとる店もあるので、後で伝票を確認した方がよい（だからといって、「これは頼んでいない」と文句をつけても金を返してくれるかどうかは定かではない）。「お通し」は、「通し」に言葉をていねいにするはたらきのある「お」を付けたものだが、語源は、注文を帳場につたえるという意味の「注文を通す」から「注文を受けました」というサインとして出すからとも、客を食卓に通したらすぐに出るものだからともいわれる。

　韓国料理の店では、メイン料理の前に無料のお通しが何皿も（ハンパでない数が）出てくることで知られている。大量に前菜を食べたらメイン料理が食べられなくなって店としても都合が悪いはずだから、なぜそんなサービスをするのかよくわからないが、韓国料理の伝統なのか、単なるおもてなし精神か、他の店との競争の結果かというところではないかと推察する。しばらく以前に、韓国料理の店が客の残したお通しを次の客に使い回していたということが問題になったが、大量に出るであろう残りものを捨ててしまうのはもったいなく、店としてもサービスで提供している料理なのだから食べ残したら次に回すのは当たり前とも思え、客もそんなことは百も承知の上で、店側との暗黙の了解がなりたっていた世界だったのに、どこかのわからず屋が「さっき下げた残飯をオレの皿に入れてたぞ！」と文句をつけたあたりから、問題が大きくなったのではないかと思われる（とはいってもまあ、前の客の残りを自分の皿に入れたり、下げた皿がそのまま出てきたりするのを目撃してしまったら、クレームのひとつもつけたくなる気持ちはわからないではないが）。（CAS）