カテゴリー:宗教、民間信仰、俗信
閻魔大王は、地獄の支配者にして、死者の生前の罪をあばき罰を定める裁判官。手もとには、人間たちの生前の行状が記録された詳細なデータと、生まれたときから死ぬまでを映し出す膨大なドキュメンタリービデオまで揃い、被告人はその厳しい追及をのがれることはできない。なかでも閻魔大王がこだわっているのは「虚言」の罪であり、その昔、幼い子どもたちは「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれる」と脅された。
閻魔(えんま)は古代インドの神Yama(ヤマ)の音写。ヤマは、古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』では天国の主宰であったが、西方から入ってきた地獄の思想が盛んになってから、いつしか地獄の長官に左遷されてしまった。その思想が仏教に取り入れられて中国に伝わると、中国人の豊かな妄想力によりさまざまな脚色がなされ、その影響を受けた日本でも、「王」という漢字を記した冠(考えてみればかなり間抜けなコスプレである)をかぶり、赤ら顔で力みかえっている姿を、神社の参詣客などの前にさらしている。(CAS)