椅子とは、あまりに汚すぎる床に直接座らなくてもすむように開発された家具。日本の住居は、床を土足で歩き回らず、常にきれいに保っているので、直接座っても衛生的であり、椅子は発達しなかった。しかし、くやしいことに、椅子は背もたれで背中を支えることにより、姿勢の矯正に役立っているのであり、栄養が不足しているうえに、背もたれもない状態で床に座っていた昔の日本人が、高齢になると背骨が曲がってしまうことが多かったのは、椅子を使わなかったことと無関係とはいえないであろう。また近年、子どもたちの脚が上半身に比べて長くなっているのも、椅子での生活が影響しているといわれ、日本人の伝統的な生活に土足で踏み込んできた感のある椅子ではあるが、その役割は無視できないものとなっている。(CAS)