いい加減

いいかげん

 いい加減とは、よい程度、適度という意味で、「暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい加減の気候になりましたね」などと用いる。しかし、普段使いの「いい加減」は、「いい」加減ではなく、「あまりよくない」加減の意味で用いられることが多い。例えば、「いい加減なやつ」というと、約束を守らないとか、言うことがでたらめな人物をさし、「試合に負けたのはいい加減な練習をしていたからだ」は「練習が不十分であった」と言いたいのである。

 「いい」加減が「あまりよくない」加減にすりかわったのは、もともとこの「いい」加減というのが、冒頭の「気候」の例でもわかるように、「暑くもなく寒くもな」い、中間の程度で「いい」と言っているからであろう。「お風呂はいい湯加減です」などというのも同様である。これを「いい加減なやつ」「いい加減な練習」に応用すると、約束をすべてきっちり守るかまったく守らないかの中間、ぜったいウソはつかないかウソばっかりつくかの中間であるから「いい加減なやつ」であり、死ぬほど練習するかまったく練習しないかの中間が「いい加減な練習」ということになる。さらに「文句を言うのもいい加減にしろよ」というのは、「もう文句を言うのはやめろ」という意味だが、これも最後まで徹底的に文句を言わず、途中の段階で、つまり「いい加減なところで」やめにしておけということである。

 こうしてみると、「あまりよくない」意味での「いい加減」は、われわれ中途半端な人間の手抜きでアバウトで無責任で不十分な生活態度を肯定的にとらえた含蓄のある表現であるともいえよう。(CAS)

いい加減 ついでにこんな言葉もチェックすべし

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