カテゴリー:文学、出版、メディア
ルビとは、漢字の読み方を読者に教えるために、その横や上に小さくかな(主にひらがな)でふられる活字のこと。読者が漢字を読めないと思うなら、ひらがなやカタカナに書き直せばよさそうなものだが、かなで書いたのではその書き手がバカと思われる(その漢字が読めない読者でさえ、そう思う)という、複雑な事情が日本語にはあるのだ。かといって、親切心を発揮してなんでもかんでも漢字にルビをふればいいかというと、「子どもを相手にしているんじゃないんだから、こんなにルビをふられたら目障りで読めやしない」と(そこに書いてある漢字の大半が読めない人でもそう思う)、やはりクレームの対象になり、料理の塩胡椒ではないがルビの振り加減は非常に難しいのである。
この「ルビ」という言葉は、宝石の「ルビー(ruby)」のこと。日本語のふりがなに使用していた5.5ポイント(7号)の活字をイギリスでrubyと呼んでいたことから、文字のサイズに関係なくふりがなに使用する文字を「ルビ」と呼ぶようになったのだという。「ルビー」と語尾を伸ばさず慣習的に「ルビ」と言うので、いまや「ルビ」で「ルビー」を連想する人はなく、「ルビ」は「ルビ」の立場にふさわしく親文字の上や横にちょこんとおさまっているのである。(CAS)