山を張る(山を掛ける)とは、リスクの大きい賭けの勝負に出るという意味だが、「山」は「鉱山」のことで、「山を掛ける」「山を張る」は金や銀など貴重な鉱脈のありそうな山を予想して、そこへ採掘資金をつぎ込むことをいったように、あまり確実性のない対象や場所に集中的に資金や労力を投下するという意味あいで用いられる。特に試験勉強などで、出題される問題を予想し、その問題だけ集中して答を覚えるというやり方に使用されることが多く、本業そのものに対する知識や努力しようとする気力はないが、試験問題の出題傾向や教師の心理を読む力はあるという、社会に出てから意外に花開く才能を備えた人物が好んでとる戦術である。
似た言葉に「一か八かの勝負に出る」があるが、「山を張る(山を掛ける)」が、その山(鉱山)を選ぶまでにその人のなりの緻密な計算が働いているのに対して、「一か八か」は二者択一の局面が目前に迫っていて、計算を働かせる余裕もなく目をつぶってえいやとどちらかを選ぶという、よりバクチ度の強い印象のある言葉である。とはいえ、どちらにしても投機性の高い勝負のありかたを言っているには違いなく、健全な市民には決してお勧めできない生き方ではある。(CAS)