モダンアートとは、それを鑑賞するさいに「さっぱりわからない」といっておけば、一緒に見ている人たちと友だちになれるアート。とはいえ、あなたの周りで「わからない」といっている人々は、あなたと同じ意味で「わからない」といっているのではないという事実は理解しておく必要がある。つまり、ある人は「人物や静物がわかりやすく(つまり写実的に)描かれていない」という理由で、またある人は「こんな汚い絵がなんで美しいといえるのか」と考えて、またある人は「この程度のものなら誰でも描けると思うし、こんな詐欺みたいな作品に何億円もつぎこむ価値があるのか」という点を問題視している。したがって、モダンアートを「わかる」といっている人同士が、実は内心お互いをけなしあっているのと同様、「わからない」お友だち同士も、表面上のつきあいに終わる可能性は高い。
「モダンアート」は「近代の芸術」という意味だが、歴史区分における近代に制作された芸術ということはできず(その時代に描かれた作品の大半はクラシカルなものであるから)、その「モダン」はむしろ、「近代以前の思考回路や価値観では理解できない」という意味でのモダンだととらえたほうがよい。
とはいえ、モダンアートの中にも理解しやすく、人々の支持を得られる作品も増えてきたので、わからなさ加減の激しいアートには、「コンテンポラリー(同時代の)アート」などという新しい名前も用意されている。(CAS)