カテゴリー:慣用語、擬声語、擬態語
冥土の土産の「冥土(冥途とも書く)」は、死後の世界のこと。仏教用語だが、釈尊は、人間の経験を超えた死後の世界や霊魂の有無について語っていないので、後世の仏教関係者の創作。どうやら中国の仏教徒が、「人が死んだらどうなるの?」と信者にしつこく尋ねられて、苦しまぎれに道教などから引用してでっちあげた世界らしい(注:不遜な説明をお詫び申し上げます。)。
「冥土の土産」は、あの世に持っていく土産という意味だが、死期の近い年寄りが、ひ孫ができるとか、初めての海外旅行に連れて行ってもらうとかいうささやかな幸せに巡り会ったとき、あの世に持っていって楽しめる土産ができたからいつ死んでも心残りはないという意味で、「これで冥途の土産ができた」と口にする言葉。しかし、そうやってすっかり旅立つ準備ができたにもかかわらず、ほとんどの年寄りはしぶとく生き続け、その後も何かにつけて「冥土の土産」ができて、あの世にいくつお土産を持っていけば気が済むんだというような例が多いのはご愛敬というものである。(CAS)