虫けらとは、昆虫類を卑(いや)しめていう言葉。また、役立たずの人間を卑しめていう慣用語でもある。「虫」は、「お虫様」とか「虫殿」などと敬われることはないので、「虫」といっただけで卑しんでいることはわかるのだが、「卑しめているぞ」という気分をはっきり示すためにこのような言葉があるのではないかと思われる。しかし語源ははっきりせず、「虫」に、それを強調する「け」と、複数を意味する「等(ら)」を付けたものであるとか、「け」があまり用いられない語であることから、もののけ、化け物というような意味の「蒸気(むしけ)」などという言葉を考案してしまった『大言海』の説や、「虫」に昆虫の一種である「螻蛄(けら)」を加えたものだと単純に考える説などがある。「螻蛄」通称「おけら」は、確かにあまり尊敬に値する姿をしておらず、賭け事に負けて一文無しになることを「おけらになる」というくらいで、卑しめられているには違いないが、昆虫類を代表して卑しめられるほどではないと思われるので、おけらの名誉のためにも「虫+螻蛄」説はとらないでおきたい。(CAS)