耳が肥えるとは、耳が太るという意味だが、耳たぶの大きい「福耳」を言っているのではなく、音楽などの聴取経験が豊富であるために鑑賞する能力に優れるという意味である。「肥える」は、客観的に横幅が大きくなることをいう「太る」と異なり、農作物が肥料をたっぷりあたえられて大きくなるように、栄養分を十分吸収してよいものになるという価値観をともなった言い方であり、他にも「目が肥える(絵画などの鑑識眼にすぐれる)」「舌が肥える(食通である)」などと用いる。しかし一方で、嗅覚のすぐれた人は「鼻が肥える」とは言われない。要するに、いくら栄養分を吸収して感覚を磨いても、たいした稼ぎにならなければ、「肥える」とは言い難いのである。(CAS)