方(ほう)とは、方向、方面という意味。また、2つまたはそれ以上の選択肢の中からひとつを選ぶ場合に「はっきりとは言えないけれど、どちらかというとそれ」という気分を表す場合に用いる。例えば、「私は頭の悪い方です」「朝は早い方です(早く起きる方です)」など。
近年、レストランなどで店員が「メニューの方になります」と言いながら、ほかでもないメニューを差し出すという煮え切らない言い方にいらだつ年寄りが増えている。しかし、方(ほう)に見られるあいまいな表現は日本語が古来から得意とする言い方で、例えば、「妻」の古風な表現である「奥方(おくがた)」は家の奥の方にいる人を意味するし、「その人」という意味を表す「その方(かた:方向、方面)」という言い方もある。さらに、二人称代名詞の「あなた(あちらの方という意味)」や、一人称代名詞にも二人称代名詞にもなる「手前(対象とする人のすぐ前にいる人という意味)」、また天皇や皇族は畏れ多くて名指しできず、指さすこともできなかったことから、「かしこきあたり(尊くて光り輝いている場所)」などと言っていた。
であるからして、年寄りの「方」も、若い者が「方」を連発するのことに、いちいちいらだったりしない「方」が、身体の「方」にもよいのではないかと、私などは思う「方」である。(CAS)