花道とは、歌舞伎の劇場で、観客席の背後から客席を貫いて舞台に達する通路をいい、主君が切腹を命ぜられて刃物を腹に突き立てたころにのこのこやってくる(もちろん大あわてでやって来るのだが)臣下が登場したり、難題を切り抜けたヒーローが「そこまでせんでも」というほどのガッツポーズを見せながら退場するのに使われる。その昔、ここを通る役者に観客がご祝儀(「はな」と言った)を贈ったためその名がある。
相撲にも花道があるが、こちらは力士が支度部屋から土俵への出入りに使う通路。平安時代の相撲(すまい)の節会(せちえ)で力士が造花をつけて登場したところからという。現代では、見た目あまりに怪しすぎるので(という理由だと思うが、そうではないかもしれない)、花をつけて登場するというしきたりは踏襲されていない。
慣用語として「花道」は、結婚式などを「人生の花道」とたとえるように、人々から祝福されるはなばなしい状況を言い、特に、スポーツ選手や芸能人などが引退試合や引退興行を成功させると「男(女)の花道を飾った」と称えられる。政治家などは、引退直前に重要法案を成立させて引退の花道を飾りたがるものだが、多くは最後に大コケして「晩節を汚す」という結果になりがちである。(CAS)