花火大会とは、春の桜、秋の紅葉と並んで、日本の夏を彩る風物詩にして、瞬間芸の大イベント。春の桜も観賞期間は短いが、花火はそれをさらに濃縮した集中観賞型のイベントであり、人々は祭の興奮と空虚感の落差を味わうために集う。花火大会のありさまは俳句にも数多く詠まれているが、「暗く暑く大群衆と花火待つ 西東三鬼」「花火上るはじめの音は静かなり 星野立子」「子がねむる重さ花火の夜がつゞく 橋本多佳子」「半生のわがこと了(を)へぬ遠花火 三橋鷹女」などのように詩人は、花火が開く前とか開いた後の描写とか、遠くで盛大に行われている花火大会の音を聞きながら人生を憂えているというような、ひねくれた視点で花火をとらえなければ名作は生まれないのである。(CAS)
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