盗むとは、泥棒の主要業務。つまり他人のものをこっそり自分のものにする、ということ。相手に気づかれないように取ることが「盗む」のポイントであり、相手が気づいているのに無理やり取るのは「奪う(うばう)」といい、強盗やひったくりの管轄となる。同じくひそかに奪う場合でも、他人の衣服から財布などを盗み取るのは「掏る(する)」、売上金から小銭を盗み取るのは「掠める(かすめる)」「ちょろまかす」などといい、それぞれ担当が違う。
盗むは、「私のデザインが盗まれた」のように、他人の作品や技術をひそかにまねる、「親の目を盗んで外出する」のように、人に気づかれないようになにかをする、という意味でも用いられる。
伝統技術の職人は、師匠の技術を「盗ん」で一人前になるといわれるが、それは師匠が弟子に技術を手取り足取り教えないからである。その意図を師匠は、言葉で教えても身につかないからだと言う。その考えにも一理あり、教えてもらえないのにぼうっとして下働きばかりしているヤツは、技術を身につける気概がないからだろうし、盗んでまで技術を習得しようとする弟子はやる気があり優秀だと考えられる。しかしタテマエはそうであっても、師匠のホンネは、メシのタネは簡単に人に教えたくない、教えたくても教える能力がない、といったところにありそうだ。(CAS)