カテゴリー:住文化、住環境、建築、インテリア、調度品
床の間とは、和室において掛け軸や花などを飾る場所。畳敷きの和室は、絵やポスターを飾ろうとしても壁というものがほとんどなく、写真立てや花瓶を置こうとしても、畳の上に書棚や飾り棚などの家具をおく習慣も以前はなかったので、そのような装飾品を集約的に飾る場所として床の間は機能していたのだといえる。もっとこてこてに部屋を飾り立てたければ、襖や壁の全面に絵を描く障壁画や、衝立としても機能する屏風という装飾品もあるのだが、見栄はあるが金はない武家にとって、その一カ所だけ装飾を工夫すればよい床の間は金も手間もかからないインテリアとして重宝されたのだと思われる。
最も本格的な「床の間」は、文具などの工芸品を飾る「棚」と、明かり取りの障子窓と書見机からなる「書院」という装置を両隣りに拝する3点セットで構成され、それらを合わせて「座敷飾り」という。しかし狭い家では「棚」や「書院」などを付設することはできず、布団などをしまう押入が床の間に隣り合っていたりするのが普通であり、「和室の決まりだから付けてみました」程度の床の間が多いのは確かである。
床の間は、機能的には、禅宗の寺院で仏具などを飾るのに使った「押板(おしいた)」と呼ばれる棚状の装置を原形とし、床より一段高くとって畳を敷くスタイルは、禅宗の椅子兼ベッドである「畳床(たたみどこ)」や、武家屋敷で殿様がお出ましになるため他の部屋より一段高くした「上段の間」を元にしているともいわれている。江戸時代に入って内戦がなくなり、殿様が飾りものになったという意味では、床の間が「上段の間」から来ているという説は魅力的である。(CAS)