駄目押し(ダメ押し)の「駄目」は、囲碁の対局において、双方の境界にあってどちらの領分にも属さず、そこに石を置いても勝敗に関係ないところのことで、そこから慣用語として「ムダなこと」「価値がないこと」の意味で用いられるようになった。「駄目押し」は、囲碁で対局後にこの「駄目」にも石をおいて勝敗を確認する作業をいい、慣用語として、「念のためにもう一度確かめること」、あるいはスポーツの試合で、「ほとんど勝敗は決しているのにさらに点を取ったり、攻撃を加えること」をいうようになったもの。
スポーツにおける「ダメ押し」は、例えば野球の試合では、大差でリードしているチームの選手がホームランを打つこと、相撲の取り組みでは、土俵を割りかかっているかもう割ってしまった相手に一突きを加えることなどがそれにあたる。この行為は賞賛される場合も非難される場合もあるが、それは「ダメ押し」したときの勝敗の決定度の差による。例えばプロ野球の試合で7対0で勝っているときのホームランも、15対0で勝っているときのホームランも「ダメ押し」と言われるが、前者はプロ意識でシビアに勝敗を決定づけたホームランとして賞賛され、後者は、戦意喪失している相手から自分の成績のためだけに打ったホームランとして、武士道もへったくれもないアメリカのベースボールでさえ恥ずべき行為とされている。このように、どの程度の戦局で「ダメを押す」のがよいのかは微妙なところであって、さらに同じ野球でも、どのような場面でもバカみたいに全力をつくすのがよいとされる高校野球では、25対0くらいで勝っていてもホームランを打った選手は誉められる。(CAS)