餞別とは、「お土産はいらないから」と言って旅行者に渡されるお土産の代金。日本の旅行者は、現地でお土産を購入するまでそのお金の呪縛から解放されない。
餞別という文字は、「別れの銭」という意味で、本来別れのしるしとして相手に渡す金銭である。旅行が長い別れになり、ときには永遠の別れになってしまうかもしれない時代の風習であり、餞別には旅の安全を祈願する意味がこめられていたが、万が一あの世へ旅立ってしまった場合にも地獄の鬼に賄賂として渡す用途も含まれていたに違いない。
昔の旅でも帰りを待っている人々への土産はつきものであったが、ほんの数日で帰ってきてしまう現代の旅行では、別れのしるしや安全祈願という意味合いが失われ、餞別は土産を買うくらいしか能のないお金になっているのである。
一方、海外出張する社員に同僚が餞別を渡すことがあるが、この場合は「二度と帰ってくるな」という、本来の「別れの銭」として渡されるのである。(CAS)