カテゴリー:日本論、国民性、習慣、礼儀
世間とは、漢字では「時間(世)と空間(間)」といったような意味だが、サンスクリット語で「世界」を表すloka(ローカ)の訳語として用いられた言葉である。仏教では器(き)世間(自然界)、衆生(しゅじょう)世間(人間など生き物の世界)、智正覚(ちしょうかく)世間(仏の世界)の三種の世間が提示されているが、単に「世間」といえば主に衆生世間についていう。
日本ではその「衆生世間」もウチ、ミウチ(家族など空間的に近くの領域にいる人々)の世界とヨソ、ヨソモノ(領域外の人々)の世界に二分され、「世間」はヨソ、ヨソモノの世界。つまり「社会」と呼ばれる領域をいう。「世間の風は冷たい」「渡る世間に鬼はない」などといわれるように、この「世間」は、安心してわがままがいえるウチ、ミウチの世界に対して、ちょっとした冒険を冒して進出していかなければならない未知の世界としてイメージされている。「渡る世間に鬼はない」は世間は優しいものだという意味のことわざだが、そんなことをあえて言い聞かせて安心させるというのは、人々の心には「世間には鬼ばかりいる」という印象が焼き付いているからである。(CAS)