ラグビーで、軽微な反則に対して与えられるアドバンテージプレー。双方の三人以上の選手が低い体勢で肩を組んでトンネルを作り、アドバンテージを与えられた側の選手がその中へボールを投げ込むという、むさくるしいスクラムの中で何が起こっているのかよく見えず、どこがアドバンテージなのかさっぱりわからないプレーである。しかし、この体勢がラグビーという球技を象徴するものになっているので、いくらむさくるしくてわかりにくても、もう少しすっきりしたわかりやすい形に変えようという試みはなされないようである。また、そんな暑苦しいプレーがしょっちゅう行われているラグビーが、冬季に行われるスポーツであるのも必然といえる。
スクラム(scrum)の語源は、「柵を巡らすこと、防御すること」を意味するフランスの古語。みんなで柵を作って中でよからぬことをしているように見えることから、この語が採用されたのではないかと思える。
ラグビーのスクラムがあまりに印象的であるために、一致団結してなにかことをなしとげようとする姿を「スクラム組む」と言い、デモ隊の行進や政党の選挙協力などを表現するのに用いる。もちろんその場合も、たいていはむさくるしい男たちが肩を組み、何をそんなに興奮しているのかというようなテンションで、わけのわからない主張を声高に繰りかえしているような様子が、容易に想像できる。(CAS)