除夜の鐘の「除夜」は大晦日(十二月三十一日)の夜を意味する。除夜の鐘とは、十二月三十一日の深夜十二時前に始めて、明くる一月一日にかけて寺院の梵鐘を一〇八回つくことをいう。仏教寺院では、本来修行のために毎日朝夕に一〇八回鐘をつくべきだとされているが、ふだんはさぼって(近所迷惑だからという理由もあるが)一八回しかついていないので、テレビ中継があったりして庶民から注目される一年の終わりには、一年間のさぼりぐせを精算するためにちゃんと一〇八回つくのである。
除夜の鐘の一〇八回という数字は人間の煩悩の数に由来し、鐘をつくことで煩悩をはらって新年を迎えるという意味があるらしいが、その他の説もある。そんなことは鐘をついている僧侶に聞けばわかりそうなものだが、きっと誰に聞いても似たような要領をえない答えが返ってくるだけなので、研究者も混乱しているに違いない。仏教の緻密な教えによると煩悩は八万四千コあるという説もあり、それから見れば一〇八回でも手抜きには変わりなく、煩悩説が疑われるのも無理からぬことである。(CAS)