修羅場の「修羅(しゅら)」は、「阿修羅(あしゅら)」のこと。阿修羅は古代ペルシャ出身、古代インドでヒンドゥー教や仏教にとりこまれ名をあげた神。その経歴や性格は複雑で、ヒンドゥー教時代は正義の味方帝釈天と常に戦闘をくりひろげていた鬼神として恐れられ、また仏教では守護神として、また「阿修羅道(あしゅらどう)」の管理者として崇められている。ヒンドゥー教で阿修羅が帝釈天と異種格闘技をくりひろげていたリングを「修羅場(しゅらじょう)」といい、そこから歌舞伎や講談などで激しい戦闘シーンのことを「修羅場(しゅらば)」と呼ぶようになった。「修羅場(しゅらば)」は、悲惨をきわめている戦場をいう慣用語であるが、現実の戦闘の場を簡単な一言で例えてしまうのがはばかられるせいか、現在では、浮気者の亭主の妻と愛人が髪の毛をつかみあって闘争しているような現場に使用されている。浮気者の亭主は、そんな彼女たちを尻目に、「いくどとなく修羅場をくぐり抜けてきたから、女の扱いには慣れている」などとうそぶきつつ、次のターゲットにねらいを定めるのである。(CAS)